ガス切り替え工事後の落とし穴

ガス切り替え工事後の落とし穴
 俺の住む土地では7年くらい前に都市ガスの切り替えがあり,それまでは4Cという屁にも等しいくらいの発熱量しかない貧相な燃料だったものがやっと天然ガス13Aに変更された。
 東京や横浜などの大都市圏で仕事を教わって地元に帰ってきた調理師の方々が自営開業されるなりどこかの職場に就労するなりの時に例外なく抱く違和感はこれで都市ガスの供給される地域内では解消されたことになる。LPGでの使用環境下については相変わらず問題を抱え続けるわけだが本題からそれるのでここでは割愛。

 俺の得意先である某総合病院にあるガスレンジは俺が勤め人だった頃に納入した個体で稼働歴は実に25年になる。
 納入の際,その病院はタニコーからも見積書を徴収し,価格は俺の提示額よりもかなり安価なものだったので俺が不審がられたのだった。
 値段は高いかもしれないが俺が最後までサポートする,それが商品価値なのだと俺はそのとき強弁した。当時の俺はまだ30そこそこで今の俺からすればどこの馬の骨とも知れない若造でしかないわけで,そんな野郎が拡げる大風呂敷というか空手形みたいな話を良くまあこの総合病院は呑んでくれたものだと感謝に堪えないわけだが,そのガスレンジは躯体の老朽化したその病院で10年近く稼働し,その後移転新築に伴って移設され、その後は俺が手を入れながら約15年が経過して今でも現役であるから,俺は若造の頃に自分が切った空手形のおとしまえはつけたと少しくらい威張ってもいいのではないか。

 数日前に俺はそのガスレンジの修繕でその総合病院を訪問した。
ガスコックを分解してグリスアップする,厨房屋としては基本中の基本で作業としての難易度は無いに等しいが、四半世紀も面倒見続けてきたのだと最後のガス漏れ点検を終えてから少しばかり感慨に耽った。
 某総合病院は約400床くらいの規模なので当然色々な機材があり,それらは全て老朽化が進んでいるので飛び込みで色々な修繕の依頼が来るのは当然なのだがこの日も病院の移転時に新設されたガステーブルで着火の良くないバーナーがあると言われた。
 新設といったって15年落ちだ。いい加減リプレースを考えてくれないものかとも思うが,25年も使用し続けているガスレンジが一方にあるとなると他の燃焼器具も同じくらい長持ちするもんだと病院では信じ込んでいるらしいフシがあり,物販の希望は敢えなく頓挫する。

 ガステーブルは俺が職場が変わってから納入したもので,総ごとく,圧電着火のごくありふれた仕様のものだ。
 時代の流れというか,ある時からはこういう仕様の燃焼器具の方が安くなったのでそういうものを納めたに過ぎないわけだが,正直なところ俺は業務用の燃焼器具はあまりややこしい着火方式は好ましくないように考えている。どうせ一日中使いっ放しなのだったら昔ながらのマッチ点火でパイロットバーナーがつきっ放しの方がアクシデントに対しては疑問の余地なく強いからだ。点火保持機能を持つ燃焼器具に対しても同じように俺は考える。

 それはさておき,本題であるガステーブルの不具合とは5個あるトップバーナーのうち一つがうまく圧電着火しないとのことだった。点火用のライターでメインバーナーは普通に着火、燃焼はする。
 着火動作の不具合は簡単に所見が定まった。パイロットバーナーからのガスの射出量が多すぎるので点火火花の引火性が良くない。流速が高過ぎて引火する前に前方にすっ飛んでいってしまう,そんなイメージだ。実際,点火操作を何度か繰り返すととてもパイロットバーナーからとは思えないくらい周辺がガス臭くなるし,ガスコックを捻るとシューシューと音をたててガスが出てくる。

 それで俺の推論は冒頭書いたような都市ガスの切り替えに及んでいった。
もしかしたら,これは本当に推論の域を出ない話だが,都市ガスの切り替え工事に伴う燃焼器具の熱変作業に於いて一箇所,ノズルの交換を忘れて4Cのままになっているのが問題の箇所ではないのか。
 単純に,長期使用によってノズルが流動摩擦で広がってしまったので射出量が増え,流速が上がり過ぎたに過ぎないという可能性は勿論あるが,状態があからさま過ぎて不自然な気がするのだ。
 
 ともあれ,この状態はパイロットバーナーのノズルを交換することで収束する。大した修理代にはならないだろう。ガス会社が行う熱変作業に手落ちがありはしなかったかとか,仮にそれがあったとして使用者がどうして7年もそれに気づかずにいたのかとかいった疑問はあるが,何事によらず人のやることに絶対はないし,どんな手違いも起こり得ると俺は考えているので今更7年前の工事を蒸し返して詮索するような真似は不毛なのでしない。
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