ディスポーザブルな社会

ディスポーザブルな社会
 先週は某コンビニチェーンでの修繕を一件行った。
オートリフト式の電気フライヤーの昇降機能が働かないというのが依頼内容だ。
この手の修理依頼は店舗からメーカーの出先に直接来ない。製造元かコンビニチェーンの内部に日本国中の店舗からのオンコールを取りまとめて受け付けるコールセンターがあり,そこからメーカーの出先機関に指示書が流れ,修理屋が店舗に訪問して始末し、帰社してから報告書をコールセンター送信する。

 分業制のある意味完成形というか,俺がしばしば言うところのワークマンworkmanで全ての役割が回っているシステムだ。

 製造元から修理依頼のあったそこは今年の6月頃に一度修理に行ったことのある店舗だった。その時にもオートリフトの昨日が不調でリフトユニットというアセンブリーパーツを取り替えたのだったがその店舗にはフライヤーが2台あるので今回はもう一方の個体なのだろうと俺は予想した。
 このアセンブリーパーツは現地で分解せずに交換後は工場に返送する。工場でリビルドされたものが補修用ストックとして倉庫に保管される。
 そのコンビニは24時間365日営業しているので現場で問題のリフトユニットを分解してどうのこうのをやっていたのでは店舗業務に迷惑がかかるので上に書いたような流れで修繕は進行する。修理屋が現場での滞在時間が最短になるような仕組みが出来ているわけだ。
 交換するのはリフトユニットの他にDCレギュレーターで,出力電圧の確認などは行わない。これはリフトユニットと同梱された状態で補修用パーツとしてあり,昇降機能の不具合があって修理訪問する時には問答無用でこの二点を交換する。

 交換の作業はドライバー一本,時間にして30分かそこらでケリがつく。本当にワークマンの仕事だ。

 通常,熱源に関係なくフライヤーの修理というものは油槽の油を抜き,機体が充分冷めていて安全が確保できた状態で行うのが常だから場合によっては当日作業は出来ずに後日というケースがよくあるがコンビニというところではこの流儀が全く通用しない。
 今まで行ったことのある店舗は必ず電源が入りっ放しでチンチンに加熱されているし,油槽はおろか油受けの缶にまで油が入っているのでとてもじゃないが修理など出来る状況にないのだ。
 こんな状態で修理をやらされて火傷でもしたらどう責任を取ってくれるのかとネジを巻いたことがあったがこういう時にコンビニの店長というのは決まって能面のように表情が消えて黙りこくる。こいつら自体がワークマンで何の裁量もない上に自分の頭でものを考える能力のないバカだというのが俺の経験則だが,現場や業種が異なるとは言え,今年の夏にはサービスマンの感電死亡事故まで出しておきながらこの業界にはいつまで経っても作業員の安全確保という発想が出てこない。業界全体がこんな体質だから社会の掃き溜めみたいな人材の集積所になってきつつあるのだろう。

 現場につくと店長は6月とは別の人物だった。年齢で言うと40かそこらくらいで,ワイシャツにネクタイ姿で下はジーンズだ。どこかの職場をクビになってこの仕事に流れ着き、インスタントな研修を受けただけの類いの,40にもなって何から何まで付け焼き刃の男らしいことは身なりや言動から容易に想像がついた。
 バックヤードに回って問題のフライヤーを見ると先に書いたような状態で普通の厨房屋の感覚ではとてもじゃないが手を出したくはないのだが,嫌味で油缶の中身を始末して空にしてくれないと油槽の油が抜けずに修理できないと伝えるとインスタント店長は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてそうなんですかと抜かした。
 こういう時には何というか,こういう低能野郎の手首を引っ掴んで煮えたぎった油の中に突っ込んでやりたい衝動が湧いてくる。

 何事によらず昨今はそういう傾向が強いが,とりわけコンビニというところに就労している人種というのは毎日毎日永遠に通常の業務が普通に繰り返されていくものだとでも考えているらしい。設備障害という非日常の出来事に対応する発想力は全くない。そういう能力を持った人に俺はこれまで一人も会ったことがない。漏電や過負荷でトリップしたブレーカーの復帰のさせ方もわからない程度のボンクラ共が食品に限らず全ての店舗機器のシステムを操っているのだからこんな危なっかしい話はない。

 それで二台あるフライヤーのうちのどちらが故障しているのかを見ると,俺が6月にリフトユニットを交換した方の個体だった。
 俺は修理屋の習性で,以前の修理で何かまずいことをしでかしたかとまずは自分を疑ったがどう考えても思い当たるフシがない。元々出来の悪いフライヤーなのだからと割り切ってクソ熱い油槽を取出す段取りにかかった。

 変に思うのは,コールセンターからも新米店長からも6月に修理したものがたった3ヶ月でまた同じように壊れるのはおかしいではないかという疑義が出てこないことだ。ましてや修理に現れたのは前回と同じくこの俺なのにあんたが何か不手際をしでかしたのではないのかと問いただされることもない。とにかく動くようにしてくれとしか言わない。

 作業そのものについては格別ここで書くようなことはない。ドライバー一本,30分で片付くワークマンの仕事だ。3ヶ月前と同じ内容の報告書を書き,店舗のスタンプを貰い,元の職場に届ける。そして月末には規定の金額が記載された注文書が俺のところに届く,無機的というか味気ないというか,そういう仕事だ。考察もなければ検証もない。とにかく時間通りに訪問して動かせばいいだけの仕事だ。

 時代の風潮としてよく、「今だけ,金だけ,自分だけ」と言われることが多い。いつの間にかそういう物差しが世の中には蔓延していることには正直なところ,暗い気分になる。
 俺はもういい歳なので,自分がオールドタイマーになりつつあることは自覚しているつもりだが,時流から取り残されていく感覚というのはやはり淋しいものだ。
 検討を重ね,充分な予算取りをして万難を排して設備導入し,長期の安定稼働を図るために使用者を固定して充分なトレーニングを施し,スキルの高い保全従事者を配置するような現場は激減しつつある。
 コンビニで言えば,全店採用の大量購入をちらつかせればメーカーや商社はどんな無理筋でも言いなりになるし,店舗の従業員ごときはそれこそ幾らでも補充が利く。店舗機器の製造元にしても抱えておくサービスマンは特段スキルの高い技術者である必要はなく,ねじ回ししかしないパーツ交換作業員のワークマンで良いのだから社員の採用人事に頭を悩ます必要もないだろう。吐き気のしそうな整合性だがそれが現状だ。

 しかしそんな虫のいい仕組みはいつかどこかで破綻するだろうし,その時には深刻な状況が現出するのではないのか,その時,誰がどうやってその状況を解決するのか。コンビニチェーンやその周辺の業者はそんなことなとハナクソほども考えていないに違いない。困っているんだ,大変なんだと喚き散らしさえすればすぐに誰かが参上して自分たちにとって最高に都合のいいやり方で解決してくれるに決まっていると信じ込んでいるに違いない。
 
 東日本大震災から4年以上が過ぎたが、殆どの人にとってそれは他人事であって危機管理とか予防保全とかについてまじめに何かを考えている人は俺の周りにはいない。いずれその報いが,いつか,どこかで現れるだろう。俺はそんな場面には関わりたくないのだが。
Source: 厨房買取を東京、神奈川で展開する厨房買取.com