ヤー公が言い分を聞いてくれないので困惑する

ヤー公が言い分を聞いてくれないので困惑する
 俺は常々,この業務用厨房の業界というのは本当にクソ体質だと言い続けている。30年以上も前から思い続けていていまだにさっぱり改善されないどころか悪化する一方だ。
 管理者画面で過去記事を眺めているうちに思い出したことがあったので書き残しておく。

関連記事名:バカンスのあおりを食う
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22

 俺は23歳で世間様にデビューした。最初の職場は某ペンギンマークのサービスマンだった。しょうもない職場であり,仕事だな,というのは入社してから幾らも経たないうちにわかった。というか,会社訪問した時点で(これはしくじったかもな)と気持ちが冷えたのは事実だ。
 ある営業所に配属されて修理に回るようになり,青二才であるがために随分色々な失敗を積み重ねた。営業所というのはつまり商事会社であって,売り上げになることなら何でもかんでも見境なく手を付けるところだということもその頃知った。

 ある時,あれは夏の終わり頃だったと憶えているが,フローズンマシンというものの修理が俺に振られてきた。当時駆け出しの俺はそれが一体どういうものなのかがさっぱりわからないまま上役に言われた場所に向かった。
 口頭説明によればフローズンマシンとは溶けかかったみぞれアイスみたいなものを作る機械なのだそうで,取り出し口の蓋から中身が漏れるので修理しといてくれと実に簡単そうに言われたわけだ。

画像は本文とは関係ありません。

 車を転がして現場に到着し、車の前で言われた通りに待っていると何だか普通でない雰囲気のあんちゃんに声をかけられた。夏だというのに長袖シャツを着ているので俺は不審に思った。
 それで,機械はこっちにあるから見てくれと言われるままについていくとそこはお祭りの露店が並んでいる往来で,その人物とは露天商,別の言い方をすればテキ屋のヤー公だったことを俺はその時初めて知ってぶったまげた。

 働き始めてまだ半年かそこらのこの俺に,一体全体なんでこんな仕事が振られて来るのかと悔しい気分になった。相手がヤー公だとわかっていて,しかもそのことは隠しておいて新入社員の俺に社外品のこんな修理を押し付けるとは本当に汚い野郎だと俺は不愉快になった。
 実は,できればこんな仕事は願い下げにしてもらいたいと思い俺は社外品なので良くわからないと断りかけたのだが、その時長袖シャツのあんちゃんは腕をまくり上げて俺を睨みつけ,露店の奥にいたもっと物騒な感じのオヤジを連れてきた。もう,誰が見ても一目瞭然の本職だ。第一,そのオヤジの手には指の欠損がある。

「社外品だろうが何だろうが、俺はこの機械をお宅の会社から買ったのだから販売責任として修理はしてもらわないと困る」といった内容のことを本職は凄みを利かせながら俺に告げ、(もう逃げられない)とか(どうしよう)とか言う文句が俺の頭の中で渦巻いた。物騒なムード満載のオヤジだが言い分は筋が通っているので断りようもない。
 観念した俺がそのフローズンマシンを見ると,イタリア製,カルピジャーニの,商品名はもう忘れたがとにかく初めて見るものだった。シリンダーの蓋、取出し用のピストンが上下動する部分に亀裂があり,中の何と言うか,先に書いたように溶けかかったみぞれアイスみたいなものがジワジワと漏れている。
 俺は何をやっていいのかもわからずにとにかく,何とかその場しのぎが出来ないものかとない知恵を絞り,アクリル製の蓋の水滴を拭き取ってヒビの入った箇所にボンドだか何だかを塗りたくり,一応漏れが止まったようなのでその場を凌いで伝票を切り,翌日集金に来いとその物騒な感じの親方に言われてその場を逃れた。

 夜になって事務所に戻り,上役に成り行きを報告し,ああいう稼業だけどお金はちゃんとくれる人だからと言われて何となく安心し、翌日何が起きるのかも知らずに当時23歳の俺はアパートに帰って晩飯を食って寝た。(この項続く)
Source: 厨房買取を東京、神奈川で展開する厨房買取.com